自動翻訳機が出来れば、英語なんて学ばなくて良いという意見があります。自動翻訳機の仕組みについて、まじめに考えてみました。
自動翻訳機のプロセス
自動翻訳機は次の様なプロセスで翻訳します。
- 端末に向かって話す
- 話した内容を理解する
- 話した内容を英語に翻訳する
- 翻訳した内容を端末に表示する(あるいは端末で読み上げる。)
1、4についてはかなり実現しています。iPhoneのSiriはかなりの精度で認識する様になりました。読み上げもかなり自然です。
問題は2、3の処理です。
内容を理解し、それを自然な英語に翻訳するためには、巨大なデータの処理と人工知能の発達なしにはし得ません。
巨大なデータの処理
人間の遺伝子は約30億塩基対あります。
2003年にはじめて、ヒトゲノムの解析が完了しました。この際には1台のコンピューターで13年、100億ドルの費用がかかりました。
2014年の時点で、ヒトの遺伝子配列解析にかかるコストは1/1,000,000に低下しており、解析に要する時間は、3日以下にまで短縮しています。
IBMのコンピューター「Deep Blue」は1997年に、当時のチェス世界チャンピオンのガルリ・カスパロフに勝利しました。
また、同じくIBMの「Watson」は、2011年に米人気クイズ番組「Jeopardy!」に出演しました。人間のクイズ王と対戦し、見事優勝し、賞金100万ドルを獲得しています。
Watsonは2011年当時で、サーバー90台で構成され、1秒間に80兆回の計算が可能なスーパーコンピューターでした。クイズの質問を理解し、100万冊分の知識を一瞬で処理する性能がありました。
このように、膨大なデータを解析し処理する能力を、コンピューターは獲得しています。
人工知能の発達
一方、人工知能も同様に発達してきています。
現在の人工知能は画像認識、音声認識の段階にあります。
写真の中から特徴を検出して顔を判別したり、話し言葉から重要な単語を検出したりする事が出来るようになってきています。
人間で言うと2歳程度の能力が備わっているとみなせるそうです。
この後は、認識できる事象が拡大し、それぞれがリンクするようになります。
結果として、2020年頃、自動運転が実用化します。
そして、2025年頃に、人工知能は、言語を理解し、翻訳が出来る様になります。
自動翻訳が出来ても
もちろん、自動翻訳が現実のものとなっても、他の言葉を覚えなくても良くなるわけではありません。
人間同士のコミュニケーションでは、機械を通さずに、自らの言葉で語る事がかかせません。
相互理解、信頼関係を築くためには、相手の言語とその背景の理解が必要になってきます。
関連資料
歴史的瞬間! IBMの人工知能が人間のクイズ王に圧勝! コンピュータが人間の頭脳を超えた日
東京大学大学院工学系研究科准教授 松尾豊氏による
「表現を獲得」した人工知能――50年来のブレークスルーで、いま人工知能は急速な進化を始めた(前編)
「表現を獲得」した人工知能――50年来のブレークスルーで、いま人工知能は急速な進化を始めた(後編)